なぜ、高級レザーが急激に値上がりしているのか？
１．バッグや靴に使われる上質レザーの急激な値上がり
シンフーライフでは、ヨーロッパを中心に上質なレザーのバッグや靴を、メーカー直輸入のプライスで適正かつ、コストパフォーマンスに優れた製品をお客様に紹介してまいりました。
しかし、特にここ数年のメーカー、工場側の製品の急激な値上げは、驚くところがあります。
それは、単に利益を大きくしたとか、供給が不足しているとかの話ではなく、今後も値上がり続ける可能性の高い世界的な問題のため、あまり喜ばしい話ではありませんが、お客様にぜひ知っていただきたくお伝えしたいと思います。
まず、少し驚かれるかもしれませんが、バッグや靴の原料となる原皮は、値上がりどころか、値下がりしている時期も多く、単純に皮の供給不足が原因ではありません。
原因は「上質な」皮が不足していることです。
２．原皮の量は増えていても、質が下がっている理由
言うまでもなく、高級バッグや靴の素材はレザー、その中でもほとんどが牛革が占めます。
耐久性にも優れ、供給量も多い牛革は、これまでも主役として使われてきましたが、ここ最近、牛革自体の生産量は多くなっているにもかかわらず、質のよい牛革は減少しているのです。
量は多くなっているのに、質が下がっている要因は、これまで、牛肉を食す文化のなかった国々の牛肉の消費量が急激に増大しているからです。
バッグや靴で使われる牛革は、ほとんどすべて、食肉加工をする段階ででてくる皮を使っています。
欧米や日本でも、牛肉の消費量はとても大きいので、これまではそこからでてくる牛皮で、賄ってきました。
しかし、需要急拡大に対し世界的に牛肉の生産・供給がまったく追いつかなくなったのです。
３．生産と供給が追いつかなくなった為、とられた施策
その結果考え出されたのは、牛を早く成長させること。
そのため、牛に成長剤等を投与することが余儀なくされました。
本来、自然に大きくなるスピードよりも、肉体が早く膨張するとそこに表皮の伸びが追いつきません。
人間も、成長期に急激に背が伸びたり、急激なダイエットで、肌に皺や線が入ることは経験ある人もいると思います。
同様に、人工的な牛の成長促進によって、牛の革は急激に伸ばされ、シワや血管が浮き上がり、結果として革の品質の低下に繋がったのです。
革は食肉の副産物として食肉優先で育てられるので、レザーの品質は二の次になります。
これまでは上質なレザーの値上がりの話ですが、さらにその後の加工工程でもコストアップは続きます。
４．値上がり要因１…皮のなめし加工コストの上昇
原皮は動物からとった皮そのものです。これを加工して、一般的に革やレザーと呼ばれるものにするために避けては通れない、そして革の質を左右する工程が「鞣し（なめし）」と呼ばれる工程です。
この「なめし」という加工を加える工程のコストが近年、人件費や薬剤の高騰などで上昇しています。
なめし工程のほうが、コストとしては原皮の値段より大きく影響します。なので、仮に牛革の原皮が下がっていても、原料の革は値上がりするのはおかしくないですが、
質の良い原皮そのものが急激に値上がりしているので最終製品に近づくにつれて膨れ上がっていくのです。
５．値上がり要因２…有名ブランドによる革の買い占め
そんな思いをして、つくられた上質なレザー。しかし、急激な値上がりはその後も続きます。
上質なレザーの製造工程までの値上がりとは別に、貴重となった高級レザーを力のあるメーカーやブランドが不足させないように囲い込む戦略をとり続けています。
災害の時に、買いだめするのと同じ感覚です。
また先ほど触れましたが、高級製品、ハイブランドのバッグや靴は日本や欧米のみならず、他のアジアの国々でも需要が急増しています。
そのため、上質なレザーを使った製品自体の生産量も上がっているのです。
６．ファッション品以外でも革の需要が拡大
また、靴やバッグだけではありません。
高級車の売れ行きも好調です。
それが高級レザーとどう関係があるのか？
高級車であればあるほど、本革のレザーシートです。レザーシートにつかわれる革の量は靴やバッグの比ではありません。
あるデータによると、2019年のコロナ以前に
輸入車の新車販売のうち、1000万円以上の車は前年比5.7％増となり、統計がある1988年以降で過去最高でした。世界最大の自動車市場、中国でも高級車が売れています。
そのため、違うカテゴリーの製品でも、高級レザーの争奪戦が起きているのです。
７．まとめ
- 牛肉の需要急拡大にあわせ、牛を急激に成長させるため、上質な原皮が減少
- さらに、加工工程でのコストも大幅に増加
- 高級レザー製品の需要も急拡大し、素材となる上質な革の争奪戦が起き、ますます値上がりに拍車をかける
そのため、10年前と比べれば50％以上値上がりしていることも珍しくはありません。
高級な牛革を使った製品の需要は今後も堅調が予想され、品薄による、値上がりという状況は続きそうです。
お客様におかれましては、ご理解の上、今がお値打ちだと思って頂きご購入いただけましたら幸いです。
2021年9月 店長 兼 チーフバイヤー 青柳
