日本製カシミヤコートの選び方|価格によって何が違う?
「カシミヤ」といえば冬の高級素材の代名詞。
最近ではユニクロなどファストファッションブランドから1万円台のセーターなども販売され、以前より気軽に購入できる一方、
高級ブランドのカシミヤコートは、10万円、20万円を超えるものもあり、価格にかなり幅があります。
お客様からも、「何が違うの?」「カシミヤ100%なら、どれを選んでも同じ?」「日本製なら品質は間違いない?」と聞かれることがあります。
実は、品質表示に同じ「カシミヤ100%」と書かれていても、原料となる毛の細さや長さ、選別の精度、生地の密度、仕上げ方によって、クオリティには差があります。
今回は、そもそもカシミヤはなぜ高級なのか、リーズナブルなカシミヤと高級カシミヤでは何が違うのか、トレンドや年齢に左右されずに長く愛せるコートのススメ、などできるだけ分かりやすくお話しします。

カシミヤはなぜ高級素材?
カシミヤ(カシミア)は、「羊の毛(ウール)の一種?」と勘違いされることがありますが、カシミヤゴートというヤギの下毛です。
カシミヤヤギの原毛の主な産地は、中国、モンゴル、イラン、アフガニスタン、ロシアといったアジア地域。
冬と夏の寒暖差が大きい厳しい地域に生息し、厳しい寒さから身を守るため、外側の硬い毛の下にとても細くやわらかな下毛(産毛)を生やします。この内側の産毛が、カシミヤ製品の原料です。
羊毛は季節になるともこもこになった羊の毛をバリカンで一気に刈り取りますが、カシミヤは産毛だけなのでそれが出来ません。
春の生え変わり時期に専用の櫛でブラッシングするように採取するので、手間がかかるうえに少量。そこからさらに硬い毛や汚れを取り除いて、ようやく糸に使える状態になります。
換毛期があるペットが家族にいらっしゃる方はイメージしやすいと思います。
羊毛は羊一頭から1回に数キロ、カシミヤヤギ一頭から採れる毛はなんと150~250グラムほど。さらに硬い毛や不純物を取り除くと、実際に原料として残るのは80~120グラム程度です。
数字で見ると想像以上に少ないですよね!ここからさらに生地にして裁断・縫製となるので、
コート一着作るためには、たくさんの原毛と多くの手間・工程・時間がかかります。これが、カシミヤが高級素材とされる大きな理由のひとつです。
細い繊維が空気を含むから、軽くて暖かい
カシミヤといえば、軽くて薄手でも暖かく柔らかいのが大きな魅力。
その理由は、繊維の細さにあります。
約10~14ミクロンと人間の髪の毛の1/5~1/7ほど。肉眼で一本ずつ確認するのは難しい細さです。
この細くて柔らかい繊維が重なり合うことで、繊維の間に空気を抱え込みます。この空気が断熱の役割を担い、
「外の寒さに体温を奪われない」
「体温を逃がさない」
二重窓のような仕組みが出来上がります。
冬は重ね着したり、ニットやジャケットの上からコートを着ることも多いですよね。
生地そのものが軽く暖かいと、動きやすく肩への負担を抑えられるので、着心地を重視するならカシミヤコート、となるわけです。
なめらかさと光沢も、繊維の細さから生まれます
繊維が細く均一にそろっているカシミヤは、肌に触れたときのチクチクした刺激を感じにくく、しっとりなめらかな手触りになります。
また、毛並みがきれいに整うことで、光をやわらかく反射し、見る角度によってふわっと現れる上品な艶ができます。
※ただし、「触った瞬間にやわらかい=必ず高品質」とは限りません。ここは、カシミヤを選ぶときに少し注意したいところ。
リーズナブルなカシミヤと高級カシミヤの違い
ここが、今回いちばんお伝えしたいところです。
カシミヤは色や繊維の長さ、太さなどの基準で等級が分けられています。
品質表示には素材の種類と混用率は書かれていますが、グレードまでは通常のタグからは読み取れません。
これが同じ「カシミヤ100%」の製品でも、価格や着心地に差がある理由のうちのひとつです。
違い1:繊維の細さ
カシミヤは、繊維が細いほど肌当たりがやわらかくなる傾向があります。
大げさにイメージすると、「毛糸玉」と「わたあめ」といったところでしょうか。
ただし、細ければ細いほど=良い というわけではありません。コートの場合は、やわらかさだけでなく、形を保つ適度なハリコシも必要です。
上質なコート生地は、カシミヤらしいやわらかさを残しながら、襟や肩、裾のラインがきれいに出るようにつくられています。
違い2:繊維の長さ
細さと同じくらい重要なのが、一本一本の毛の長さです。
長い繊維は、糸にしたときに繊維同士がしっかり絡み合います。そのため毛が抜けにくく、表面の毛羽立ちや毛玉を抑えやすくなります。
反対に短い繊維が多い場合、最初はふわふわとやわらかく感じても、着用や摩擦によって繊維が表面に出やすく、毛羽立ちや毛玉につながることがあります。
違い3:原毛の選別と除毛
採取された毛には、やわらかな産毛だけでなく、硬い表毛や汚れなども混ざっています。そこから不要なものを取り除く工程を「除毛」といいます。
上質なカシミヤでは、この選別と除毛を丁寧に行い、細さや長さのそろった原毛を集めていきます。
ここでどれだけ手間と時間をかけているほど、均一な産毛が揃い、ハイグレードなカシミヤとなります。
同じ産地のカシミヤでも、どの毛を選び、どこまで丁寧に整えたかによって、原料の価格は大きく変わるのです。
違い4:糸のつくり方
選別された原毛は、繊維の向きをそろえ、撚りをかけて糸にしていきます。
撚りが弱すぎると、ふんわり見える一方で毛が抜けやすくなることがあります。反対に撚りが強すぎると、生地が硬く感じられることもあります。
やわらかさ、耐久性、ふくらみのバランスを考えながら糸をつくるには、原料だけでなく紡績の技術も必要です。
違い5:生地の密度と使用する原料の量
価格を抑えたカシミヤ製品の中には、使用する原料を抑えて、軽く薄い生地に仕上げているものもあります。
寒暖差調整の軽めの羽織りとして春先まで着たいとき、室内で羽織る用、などはこういった薄手のほうが向いていますが、
冬のアウターとして選ぶなら、より防寒性が高く中に着る服のシルエットを拾いすぎない適度な厚みの生地がよいです。
違い6:起毛と仕上げ
カシミヤの生地は、織り上げたあとに起毛や縮絨、プレスなどの仕上げを行います。この工程によって、表面のなめらかさや光沢、ふくらみが整えられます。
リーズナブルな商品でも、表面を強く起毛することで、店頭で触った瞬間にとてもやわらかく感じる場合があります。
ただ、起毛が強すぎると短い繊維が表面に出て、着用後に毛羽立ちやすくなることも。
スタッフからひとこと
カシミヤは、値段が高ければ「必ず良い・自分に合う」というものでもありません。高ければ「ケアをしなくてもケバだったり毛玉になりにくい」というわけでもありません。毎日気軽に着たいのか、特別な場面にも使える一着を長く着たいのかによって、ちょうどよい価格帯は変わります。大切なのは、基本的な価格差の理由を理解したうえで、自分の目的やライフスタイルに合うものを選ぶことです。
「カシミヤ混」と「カシミヤ100%」の違い
カシミヤ100%
- カシミヤらしい、なめらかな肌触りを楽しみやすい
- 軽さと暖かさを両立しやすい
- 上品でやわらかな光沢が出やすい
- 原毛や生地の仕上げによって品質差がある
カシミヤ混
-
- 組み合わせる素材によって、それぞれの特徴を生かした生地になる
- カシミヤ単体とは違った光沢や風合い、表情を楽しめる
- デザインに合ったシルエットをつくりやすい
- 「カシミヤ混」の表記だけでなく、実際の混用率によって異なる
セーブルを加えることで、カシミヤだけとはまた違う、しっとりとしたタッチや繊細な光沢が生まれたり、
スーパー180ウール(super 180’s)という特別なウールを加えることで、また違った表情や厚みが出たり、
数字だけを見て「100%だから上」「混紡だから下」と決めるのではなく、どんな特徴の生地なのか、肌触りや重さ、シルエットまで含めて選んでみてください。
日本製カシミヤコートの魅力とは
日本製コートの魅力として、私たちが特に注目しているのは、日本人の体形に合わせて丁寧に整えられた仕立てです。
カシミヤのようにやわらかな生地は、扱いが簡単ではありません。縫製時に生地が伸びたりずれたりすると、襟や前身頃、裾のラインにそのまま影響します。
特にシンプルなコートは装飾が少ないぶん、ごまかしがききません。襟が自然に立ち上がるか、肩から袖へきれいにつながっているか、裾が波打たずに落ちているか。こうした細かな部分が、着たときの印象を決めます。
また、海外の高級メゾンブランドの何十万円のコートであっても、コート自体が高品質であっても、身体に合っていなければ重く感じてしまったり、”着られている感”が出てしまったり…。
ボタンを閉じた姿だけでなく、開けて着たときに「前身頃がきれいに落ちるか」もぜひ見てみてください。実際には前を開けて着ることも多いので、要チェックです!
ただし、「日本製」という表示だけですべてを判断することはできません。どんなブランドなのか、生地の質、縫製、仕上げ、そしてご自身の体型との相性まで含めて確認し、長く愛用できる1点を見つけましょう。
上質なカシミヤコートを見分ける7つのポイント
「専門家でないと見分けられないのでは?」と思われるかもしれませんが、試着のときに確認できることもたくさんあります。
- 持ったとき、重さが負担にならないか
ハンガーに掛かっている状態ではなく、実際に羽織って確認します。腕を動かしてみると、肩にかかる重さが分かりやすくなります。 - 表面に自然な光沢があるか
強いテカリではなく、見る角度によってやわらかく現れる艶がひとつの目安です。※マットに仕上げた生地もありますのであくまでも目安です - 毛並みが均一に整っているか
一部分だけ毛羽が長く出ていないか、生地全体の表情がそろっているかを見ます。 - 生地に適度な密度とコシがあるか
やわらかいだけでなく、襟や裾の形をきれいに保てるかも確認してください。 - 襟が浮いたり、左右にずれたりしていないか
ボタンを閉じたときと、開けたときの両方を見てみましょう。 - 肩から袖のラインが自然か
肩回りのフィット感、腕を下ろしたときに余分なシワや引きつれがないかを確認します。 - 歩いたとき、裾がきれいに動くか
鏡の前で立つだけでなく、少し歩いたり腕を動かしたりすると、仕立ての違いが見えやすくなります。

最後は、袖を通したときに「重さが気にならない」「自然に姿勢が整って見える」「これなら何度も着たい」と思えるかどうか。数字だけでは分からない感覚も、ぜひ大切にしてください。
長く着るためのお手入れと保管方法
クリーニングに出せばOK、と思っている方!ちょっとお待ちください!
実は専用の高級クリーニングを除き、一般的なクリーニングには艶や風合いを損なう恐れもあります。
カシミヤコートは、着たあとのちょっとしたお手入れで、きれいな状態を保ちやすくなります。
定期的にクリーニングに出すことも、難しいことを毎回する必要もありません。まずは、ここから始めてみてください。
帰宅後は、すぐに収納しない
コートを脱いだら、厚みと幅のあるハンガーに掛け、直射日光の当たらない場所で湿気を飛ばします。
細いハンガーは肩の形が崩れる原因になるため、コートの肩幅に合ったものがおすすめ。ポケットに重いものが入っている場合は取り出して、付属ベルトもベルトループから外して休ませるのがなお良いです。
ちょっとイイ洋服ブラシで、しっかりホコリや汚れを落とし毛並みを整える
カシミヤのお手入れというと、毛玉取りを思い浮かべる方も多いのですが、毛玉を取る=繊維を切ってしまうので、日頃からブラシで毛並みを整えておくことが大切。
またほこりは花粉、汚れは、生地の表面だけでなく、繊維の間にも入り込みます。
生地を傷めない柔らかさとしっかり汚れを掻き出すコシがあるブラシを選び、しっかりとブラッシングをしましょう。

シルクもカシミヤも使える。繊細な生地のお手入れは「イシカワブラシ」
やわらかい毛だけでは、生地の奥に入った細かなほこりを十分にかき出せません。反対に、毛が硬すぎると、カシミヤの繊細な表面には負担になります。
シンフーライフで取り扱っているイシカワブラシは、横浜のブラシ職人・石川和男氏が手掛ける日本製の高級洋服ブラシです。
使われているのは、「尾脇毛(おわきげ)」と呼ばれる馬の尻尾の付け根付近に生える希少な毛。高級毛筆にも使われる素材で、毛先のやわらかさと、ほこりを払い出すためのしっかりとしたコシを併せ持っています。
「やわらかさ」と「コシ」のバランスを追求してつくられているため、カシミヤをはじめ、シルクや和服など、繊細な素材のお手入れにも適しています。
価格だけを見ると、洋服ブラシとしては驚かれるかもしれません。ただ、上質なコートやスーツを長く美しく愛用したいのであれば、まず持って後悔の無いアイテムです。
※ブラシの適性や使用方法は、生地とブラシの種類によって異なります。初めて使用するときは目立たない部分で試し、商品に付属する説明をご確認ください。
毎日同じコートを着続けない
お気に入りのコートほど毎日着たくなりますが、できれば1日着たら少し休ませてあげてください。
繊維に含まれた湿気を逃がし、生地を休ませることで、型崩れや毛羽立ちを抑えやすくなります。
クリーニングは洗濯表示に従う
カシミヤコートのお手入れ方法は、表地だけでなく、裏地や芯地、装飾などによっても変わります。必ずコートについている洗濯表示を確認してください。
汚れが気になる場合は、カシミヤなどの獣毛素材を扱い慣れたクリーニング店へ相談すると安心です。
保管前に汚れを残さない
汗や汚れが残ったままだと、変色や虫食いの原因になることがあります。シーズンが終わったら状態を確認し、必要なお手入れをしてから収納しましょう。
クリーニング店のビニール袋は、持ち帰り用の簡易包装です。保管するときはビニールを外し、通気性のあるカバーに替えてください。
防虫剤は直接コートに触れないようにし、クローゼットへ衣類を詰め込みすぎないこともポイントです。
素材と仕立てにこだわったVia Sericaの日本製コート
Via Serica(ビアセリカ)は、1937年創業の紡績会社が最高クラスのmade in Japan をコンセプトに、上質な素材と国内での丁寧な仕立てにこだわったブランドです。
大人の女性がきちんと見えて、それでいて頑張りすぎた印象にならないこと。袖を通したときに、重さや窮屈さが気になりにくいこと。
冬のお出かけに自然と手が伸びる一着を目指して、素材だけでなく、襟の形や肩まわり、全身で見たときのバランスまで考えています。
※掲載価格・カラー・在庫状況は記事作成時点のものです。最新情報は各商品ページでご確認ください。
まとめ|品質表示だけでなく、原料と仕立ても見て選ぶ
カシミヤが高級なのは、軽くて柔らかく保温性も高い性質から需要が高いものの、カシミヤヤギ一頭から採れる量が少なく、原毛の選別や除毛、紡績、織り、起毛、縫製と、多くの手間がかかるため、
そして同じ「カシミヤ100%」でも、繊維の細さや長さ、均一性、生地の密度、仕上げ方から等級もあり、仕上がりが異なること、
またこれ以外にも各社の企業努力や生産力、ブランドバリュー、デザイン性、なども影響します。
ですから、混用率や価格だけで決めず、ポイントをチェックしながら、自分のライフスタイルや用途に合わせてご検討頂くのが”良いコート”を見つける1歩です。
そして、気に入ったコートに出会えたら、日々のブラッシングと休ませる時間も忘れずに。大切にお手入れをしながら、冬が来るたびに着たくなる一着に育てていただけたらうれしいです。

セレクトショップシンフーライフスタッフ小林です。
アイテムの選定、ご紹介からお客様サポートまで対応しております。
「何も入らない」と言われるくらいのミニバッグと超BIGトート、スカーフが大好きです!
バッグ愛・スカーフ愛を持ってお届けしてまいります!




















